所在地調査の現状

所在地調査の現状

所在地調査は、探偵が行う浮気調査(第2対象者の現住所)、行方調査(失踪者の所在)、身上調査(身元確認)やストーカー対策(加害者の特定)など多岐に及び調査の基本と言えます。依頼者様から得た手掛かりをもとに尾行や張り込み・聞き込みによって行いますが手掛かりが少ない場合は、情報収集手段を利用し得られた情報から所在地の確認を行います。現状では、個人情報保護法や条例などの規制で手掛かりを得る手段は狭められ調査そのものを難しくしています。

(1)以前の情報収集手段

氏名、生年月日、容姿(顔写真)、電話番号などの個人情報(注1)のほか最寄り駅、よく行く場所、勤務先、知人などの手掛かりが判明している場合はそんなに難しくありません。法律による規制があまり厳しくない頃の情報収集手段としては以下のルートがありました。

自動車登録番号から自動車検査証の再発行や登録情報の閲覧が登録番号の記載だけで可能でした。公募(戸籍謄本、住民票の取得)の代理申請は、個人情報保護法施行前は代理人(委任状あり)による申請は可能でした。携帯電話番号から住所・氏名検索サービスや会員名簿等のデータ検索(漢字氏名検索)は現在もありますが同姓同名のケースが多く、生年月日、性別での絞り込みが必要で空振りも多数ありました。また、学歴、勤務先が判明している場合は、同窓会名簿、卒業名簿や従業員名簿から検索する方法がありました。郵便物転送届から住所を調べるサービスがありましたが、現在は不明です。大昔は、「協力者」を仕立てて情報を得ていた業者もあったようですが、言語道断です。現在、銀行や携帯電話会社等では情報漏洩事故を防止するため企業内データベースへのアクセスは監視・制限される運用になり不正取得は不可能となっています。情報漏洩事故の原因の7割は、紛失25%、操作ミス24%、不正アクセス20%となっています。

(注1)個人情報とは生存中の個人に関する情報、特定の個人を識別できる情報または個人識別符号が含まれる情報と定義されます。具体的には、氏名、住所、電話番号、DNAの塩基配列、声紋手・指の静脈の形状、指紋・掌紋、パスポートの番号、基礎年金番号、免許証の番号、住民票コード、個人番号(マイナンバー)、保険証の番号、在留カードの番号、特別永住者証明書の番号のほか人種、信条、犯歴、病歴、犯罪被害者の事実や身体的・精神的障害などの要配慮個人情報が含まれます。ご参考まで。

(2)情報収集手段の現状

法律による規制や取り締まり(迷惑防止条例など)の強化により情報の収集がより難しい状況になっています。

・「戸籍や住民票」では、個人情報保護法の施行により戸籍・住民票の代理申請は不可になっています。勤務先、病院でも個人情報保護を盾に住所などは教えてもらえません。行政書士による「内容証明作成サービス」では、昨年8月、不正に戸籍を取得して「戸籍法違反」で栃木県の行政書士が逮捕されています。本人は、容疑を否認しているようですが栃木県行政書士会では規律違反による二年間の権利停止処分を出しています。これにより結婚調査はほぼ不可能になります。但し、弁護士による「職務上請求」あるいは「弁護士会照会」で取得することができますが、あくまで「トラブルを解決するための手段として行う」もので単に身元調査のために戸籍を取り寄せることはできません。

・「データ調査」では、令和4年4月に改正個人情報保護法が施工される予定で個人情報取り扱い事業者の義務、情報開示および取得方法の規制や違反した場合の罰則が強化されますので情報データベースを取り扱う業者からの入手には注意が必要と思われます。特に商業用に個人情報をカテゴリ分類した加工個人情報を販売している業者は情報を第三者に開示する場合、「個人情報保護委員会」への届け出が必要で違法な開示をしていないか要注意です。また、データ調査を得意とする同業者に外注する手段がありますがその情報源が不正なものか注意が必要です。

・「車検証再発行や登録事項等証明書請求」では、車体番号の記載が必要となった(2007年11月)時点で第三者による申請は不可能となっています。また、登録事項等情報提供サービス(登録事項の閲覧に相当)も車体番号と登録番号を同時記入しなければ提供してもらえません。車体番号が車両のどの部分に記載されているかがわかっても車体番号を知ることは至難の業です。そのほとんどはエンジンルーム内に型式と共に刻印されています。その他運転席前の床面や運転席側前輪タイヤハウス内の場合もありますが外から容易に見ることはできません。

・「GPSによる車両の行き先監視」では、第三者による合意のないGPS装置の取付は違法となっています。配偶者が取り付けた場合はグレーゾーンですが運が悪ければプライバシー侵害で訴えられる可能性があります。SIMフリーかつデータ通信のみの場合、氏名を電話番号に紐づける義務がないため発見されてもGPS所有者の特定に時間を要するので見逃されていますが本気で捜査されるとバレます。また、「長時間の張込み」は、監視カメラの急増や通報のリスクが大きいので相当のノウハウが必要です。現状では、リモート(Wi-Fi接続またはLTE)によるカメラ映像で監視するケースが増えてきています。また、行き過ぎた尾行、つきまとい行為は相手に苦痛を与え犯罪行為(迷惑防止条例、ストーカー規制法)となるため注意が必要です。

・「失踪者の情報収集」では、幼児、高齢者の失踪など緊急性が予見される場合や事件性が疑われる場合を除いて「家族の家出」は、警察に相談し行方不明者届(捜索願)を出しても「一般家出人」扱いで処理され捜索してもらえないことが多いです。あとは自分で探すか探偵に依頼するしか方法はありません。意図的に失踪した場合は遺留物(手がかり)はほとんどなく依頼者様からの情報(氏名、生年月日、容姿、顔写真、性別、体型、失踪時の服装、持ち出し物、病気の有無など)が頼りになります。それらの情報をもとに「ネットワーク上に存在するSNS情報」から知人の割り出しや出没場所などの手掛かりが得られる場合があり重要な情報源となり得ます。スマートフォンのアプリに含まれるLINEのタイムラインは携帯電話番号から閲覧できる場合があり手掛かりが得られる可能性があります。また、スマホのGPS機能にスマホの検索サービスがあります。双方に同じアプリがインストールされている必要があり難しいかもしれませんが家族や恋人であればインストールアプリの有無が分かる場合があります。利用にはアプリアカウントやグーグルアカウントが必要ですので遺留物(ノートやメモなど)は重要です。アプリにはアンドロイドの場合、「端末をさがす」(googleアカウント)やiPhoneの場合、「Iphoneを探す」(AppleIDとパスワード)などがあります。

(3)今後の課題

依頼の中にはDVやストーカーに関係するものがあります。この場合、依頼者様との会話で依頼理由があやふやで対象者との関係がうすいと感じる場合、犯罪に加担する恐れがありますので調査には慎重さが求められます

現状、個人情報の取得は厳しい状況にありますが、探偵は法律を遵守しつつ依頼者様の要求に応えるべく更なるルートや手段を開拓することが肝要となります。特にインターネット上のSNS情報(ツイッター、インスタグラム、フェイスブックなど)の画像データはその背景から立ち寄り先、住所、最寄り駅や知人などの手掛かりを得るための重要な情報源となり得ます。アカウントが本人のものと特定できれば、聞き込み(偽装工作による取材)や尾行により所在地を特定できる可能性があります。また、手掛かりを得る別の方法として「公開情報」があります。住宅地図、不動産・商業登記情報提供サービス、官報(博士論文、悪質な違反者ほか)、商業用データベースから手掛かりが得られる場合があります。基本的に依頼者様よりの情報をもとに尾行、張込み・聞き込みによって情報収集するしかないのですが、インターネット上に埋蔵されている情報の中から本人を特定できる手法を開拓していく必要があります。

尾行や張り込みを行う手掛かりとしてどんな情報が必要か?氏名、容姿(顔の近影、性別、年齢)のほか知人・友人の氏名・勤務先や最寄り駅、子供の学校、勤務先、方言、ゆかりのある場所(地縁)、旧住所などがあります。これらを組み合わせて候補地を2~3か所に絞り張込みを行います。どんな些細なことでも探偵に情報提供することが所在地特定の早道となります。張込み・聞き込みから新たな情報が得られ、これを基に更に絞り込みを行うことが可能になります。規制によって失われる情報源があれば自ずと出現してくるのが「秘密の情報ソース」です。調査依頼の深刻さがこれらを活用せざるを得ない事情を生じさせるのも事実です。犯罪行為だけは避ける努力は絶対に必要です。

 

 

 

 

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