素人探偵の怖さとは?
(1)素人が自力で調査する理由?
夫(妻)が浮気をしているかもしれないと疑心暗鬼になっている妻(夫)がその証拠を掴もうと行動調査を思い立った際、その方法がわからない為、通常は探偵業者に相談するものです。しかしながら相見積もりを取っては見たものの探偵に依頼すれば最低でも30~50万円を支払う必要がありそれがもったいない、比較的時間がありテレビの番組を見て「私にもできる」とその気になり自力で証拠を掴んで安上がりにしたくなるのは容易に推測できます。また、追跡装置であるGPS端末が探偵業者以外の一般人にレンタルする会社が増えたことや買取品がアマゾンなどでネット販売され簡単に手に入れられることに一因があると考えられます。探偵に依頼し高額料金を支払ったにも拘わらず調査報告や結果が全く出てこない悪徳探偵が横行していることも背景にありそうです。
(2)無謀な尾行で墓穴
今年5月に起こった事例を紹介します。GPS端末を借り受け夫の車に取り付けて尾行することにしたのですが、1人では心ぼそいので女友達と組んで素人探偵をすることにしたようです。GPS端末の位置情報では周囲の施設を地図上で確認するだけでホテルに入っているかどうかまでは不明なため、停車地点まで出向いて不倫相手がいるかどうか確かめようと夫の車を車輌尾行します。さすがに使用した車は友人のものです。一度や2度ならず継続して尾行されている(夫)側からすると何か違和感を感じるのは当たり前ですね。夫は、誰かに尾行されているとして探偵業者に(ストーカー被害)の調査依頼をします。妻と友人は位置情報を共有し夫を数日間、尾行します。探偵は、依頼者(夫)が友人と飲食している最中に怪しい車輌を発見。ストーカー被害の証拠として顔、姿などを撮影します。
継続して夫の車を尾行していることはバレバレで、探偵につきまとい行為としての証拠を撮影された妻と友人は逆に盗撮されたと110番通報した模様で、その後警察からつきまとい行為の容疑をかけられています。恋愛感情に基づかない「つきまとい行為」を反復して行った場合は、迷惑防止条例違反として1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金となります。おまけに友人は探偵のまねごとをしていたため「探偵業の業務の適正化に関する法律」に規定されている探偵業務の届出を出さずに尾行を行う違法行為を行ったとしてきつく絞られたようです。妻に関しては、「つきまとい行為」等の不法行為を理由に夫の優位な条件で離婚が成立した、と聞いています。結果から考えるとなんと無謀なことをしたのかと思いますが、これが素人探偵の現実です。
(3)素人では尾行は無理
探偵をやり始めたころは、よく失尾を経験しました。探偵学校でも実地訓練してきましたが最初はうまくできないものです。何回か失敗するうちにどうすれば見失わずに尾行できるかが分かってきます。所謂、勘というものです。何年かかけて経験を積み重ねた結果、誰にも気づかれずに尾行することできるようになります。尾行は、単独で行うのは難しいものがあり通常は複数で行います。道中の所在地がわかる表示の撮影や接触した人物の証拠写真などやるべきことが結構多いのです。昨日今日思いついた俄か探偵では、失尾はともかく撮影する余裕など全くありません。逆に対象者に近づきすぎてバレ、追いかけられたりします。夫や妻ならば顔がもろ分かっているので後々の調査は不可能となります。この状況で探偵に依頼しても対象者に警戒され証拠は取れなくなります。
(4)証拠撮影は素人では無理
行く先々で駐車している夫の車や異性と食事している写真が撮れたとしても「不貞行為の証拠」として裁判では通用しません。裁判で提出しても突き返されるだけです。例えば、暗闇での車中の行為、人通りの少ない薄暗いラブホテルの出入り口での鮮明な顔写真などは特殊機材(超望遠、暗視機能、赤外線カメラ)や撮影ノウハウがなければ撮る事は不可能です。ましてや長時間の張込みで通報されたり撮影のために近づきすぎて発覚してしまいます。特殊機材や撮影ノウハウを持ち合わせていない素人探偵では証拠写真を撮ることができません。最近では、4Kカメラの出現により100m以上離れていても超望遠で鮮明な顔写真が撮れます。これが、バレずに裁判証拠で通用する撮影技術であり素人は勿論のこと駆け出しの探偵社でも不可能な技術です。
(5)つい、口に出してしまう危うさ
夫の行動が怪しいとのことで行動調査を受けた時のことです。調査結果は調査が終了してから報告するのですが、依頼者から稼動した日の行動を聞いてくる方がおられます。夫が話した内容と探偵から確認した内容が違っている時、感情的になってしゃべってしまう方がいました。結果は、夫が「あれっと」疑いだしてその後の調査ができず中止になったことがあります。また、素人が尾行し、異性と食事に行ったことを突き止めたものの家庭内でつい口に出してしまい、夫婦喧嘩のあと怪しい行動を全くしなくなり証拠が掴めなくなったと聞いたことがあります。冷静でなければ証拠を掴むことはできません。
(6)調査は探偵にまかせるべし!
探偵をテーマにしたテレビ番組の見過ぎで「私にもできる」と勘違いする方がおられます。この方たちは、自分と対象者の関係しか見ていません。探偵は周囲の状況をよく観察し自分が周りの人からどのように見られているかを常に考えて行動しています。探偵は、密かに尾行・張込みを行っていますので対象者は勿論のこと周囲の人にも全く気づかれずに行動しています。対象者に気づかれたり、対峙してしまうと警戒モードになって以降の証拠は全く取れなくなります。また、期間が長くなったり調査員の数が増えて料金が高額になる恐れがあります。自力で証拠を掴もうとせず、このような事態になる前に専門家に任せるべきと考えます。
しかしながら、探偵業者の中にも素人を寄せ集めただけの事務所が存在するのも事実です。探偵は、日々研鑽し調査技術の維持、向上に努めることでベストな結果を出し、依頼者様のご期待に沿えるよう努力いく必要があります。