GPS調査の有用性と課題

GPS調査の有用性と課題

(1)車輌での尾行・張込みは難しい!

素行調査や浮気調査では、対象者の行動を逐一、映像などで記録します。対象者が徒歩や公共交通機関を利用して移動する場合は、「徒歩尾行」で調査します。一方、対象者が車輌で移動する場合、「車輌尾行」で調査します。いずれの尾行手段であっても「失尾をしない」ことが極めて重要となります。

「徒歩尾行」の場合、混雑した改札口や階段、エレベータの乗り降り、出入口が複数ある商業施設などは失尾の可能性が高くなるため2人以上で尾行する探偵社は多いです。カメラ撮影や尾行監視など役割分担しながら付かず離れず動向を記録します。対象者の立寄り先、行き先、接触した人物などを映像等で記録する作業は1人では結構大変ですので、複数人で尾行し「失尾」しないことに注力します。1人での強引な尾行は「つきまとい行為」で通報の恐れがある為、2人以上でやることは多いです。

「車輌尾行」の場合、失尾の確率が高くなります。対象車輌との位置取り、停止位置などの尾行技術を駆使しても、どうすることも出来ないのが「赤信号」です。渋滞で接近できず赤信号に切り替わるタイミングで「失尾」のケースが多くなります。熟練の探偵でも何回かに1回は失尾します。信号で20秒近く留まると対象車輌は、300m以上離れてしまいます。直進している場合はともかく右左折された場合は、ほぼ「失尾」となります。自動二輪車とペアで尾行すれば「失尾」の確率は下がりますが、それでも交差点での厳しい運転を余儀なくされ危険です。また、運転操作と監視・記録を同時に行うのは神経も体力もかなり消耗します。

複数車輌、多人数での車輌尾行の場合、失尾の確率を大きく下げることができますが、調査料金が高騰しお客様にとって全くメリットがありません。10年ぐらい前は、1人で尾行していましたが交通ルールを守っていたら即、失尾でしたね・・・。また、普段見かけない車が長時間停車していれば確実に不審車輌として警察に通報されます。

(2)GPS調査の有用性

GPS端末とは、衛星との通信で時差を計測することで端末の所在する位置を測位する装置です。ここ数年前からスマートフォンに、キャリアの通信回線を通じて位置情報を色々なサービスに提供したり自己位置を端末画面に表示させるGoogle Mapなどがよい例です。ドコモやAUでは、徘徊老人や子供の見守り、タクシーやトラックの運行管理などの目的で各種専用端末をリリースしています。一方、探偵が車輌尾行に使用する端末は、対象車輌の車体下部などに秘密裏に取り付けることを想定した端末となります。いずれの端末も検索した位置情報をスマートフォンやタブレットに送信し現在位置が確認できます。現在位置といっても検索から表示まで若干時間がかかりタイムラグが発生します。

「車輌尾行」の場合、対象車輌の位置情報をスマホやタブレットに表示させるこの装置は「失尾」を解消させるだけでなく、撮影ミスや交通事故の防止に極めて有用となります。更に、停車場所の周辺を(現地に出向くことなく)ストリートビューで確認出来るため調査費用を軽減させることができます。但し、どの時間帯でも位置情報を取得できるため「プライバシー侵害」の恐れや第三者に漏らすと「電波法違反」に抵触する可能性がでてきますので留意が必要です。ほとんどの探偵社は、レンタル若しくは買取りで入手し使用していると思われます。探偵ですから密かに取り付け、ひそかに取り外す技術は必須です。

(3)GPS端末について

GPS端末出始めの頃は、精度が悪い端末が多かったのですがそれでも最大20m程度の誤差であったと思います。最近のGPS端末は、精度が5mにまで改善され検索回数も大幅に増強された端末が「自動検索型リアルGPS」として出てきています。これらのGPS端末は、基本的に携帯電話(無線局)でありデータ通信用のSIMカードを装着して電話番号が各端末に割り振られています。買取するタイプは、プリペイドSIM(利用料金前払い)で利用期間が決まっています。価格は2万円~4万円程度です。一方、レンタルタイプは長期利用も含め、レンタル業者が携帯キャリアと特別契約している端末に利用者情報を緋も付けて利用させているもので、継続使用ができます。レンタル料は主にデータ回線使用料となります。

その他にGPSロガータイプがあります。位置情報を後日、パソコンなどで解析し走行履歴を確認するものです。これは、無線局(携帯電話)ではないので契約や使用料は不要です。企業の運行管理は、このタイプで十分活用できます。

(4)取り付けについて

GPSの取り付けは、原則ご依頼者にお願いしています。探偵は、そのお手伝いをするというスタンスです。但し、探偵が代行を依頼される場合もあります。エンジン部分やマフラーの熱い部分を避け後部若しくは中央フレームで鉄部の幅が厚くで平らな部分に取り付けるようアドバイスしています。端末にはネオジウム磁石が巻きつけられ、その磁石で鉄部に吸着させ使用します。また、車検期限から一月以内は避けるようにします。車検ではすぐにバレます。運がよければ見逃される場合がありますが、期待薄です。取り外しは、装着した場所をよく覚えておかないと外せなくなりますので注意が必要です。

(5)GPS捜査は違憲!

警察の捜査で、「GPS端末を被疑者の了解を得ず、密かに車輌に取り付けその位置情報を取得する「GPS捜査」を平成18年6月から密かに実施していたようです。各地の下級審で憲法違反による証拠能力の是非について係争していたようですが、判事によっては違法の判断にバラツキがでている状況の中、平成29年3月最高裁大法廷で、「車輌に使用者らの承諾なく密かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続き上の捜査であるGPS捜査は、個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に密かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であり、令状がなければ行うことができない強制の処分である」との判断が示されました。簡単に言えば、令状なしの捜査は違法であり個人のプライバシーの侵害に当たるというものです。(憲法35条に個人のプライバシー保持の権利について規定あり)。

更に、被疑者に知られず密かの行うのでなければ意味がなく、事前の令状提示を行うことは想定できない。つまり、現行の強制処分では対応できない新たな強制処分である、との見解も示しており、「GPS捜査が今後も広く用いられ得る有力な捜査手法であるとすれば、その特質に着目して憲法、刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい」としています。これで現行法上の令状を発付することが難しくなるため、事実上GPS捜査は出来ないことになりますね。秘密裏にやる分には利用できそうですが・・・バレなければです。GPS捜査で得た情報をもとに第2の証拠を積み上げ、GPS捜査で得た情報は表に出さない、などやりようはありそうですが・・・・。

(6)GPS調査の法律上の課題

探偵が行動調査、素行調査で個人のプライバシーを秘密裏に調査するのは、公道上での尾行、張込みなので法律に抵触することはありません。但し、執拗につきまとう行為は軽犯罪法違反となりますが・・・。ではGPS調査はどうでしょうか?以前からGPS端末の取り付けを個人の敷地内で行えば、住居侵入罪に相当すると言われています。また、位置情報を本来の目的(業務管理、運行管理、子供の見守り、盗難防止など)外で取得した場合、「不正指令電磁的記録共用罪」になる恐れもあるようです。GPS端末がバレた場合、その使用者が判明すればややこしくなるかもしれませんね。プライバシーの侵害で訴えられる可能性はありますが、全くの他人ではなくパートナーや家族の場合では訴えられることはないように思われます。GPS装置の使用者が不明であれば破壊されて終わりなんですが・・・。

GPS調査で取得した情報を何に使用するか?ですが、探偵はご依頼者に報告書として「行き先」「同伴者」など報告しますが、GPS端末を使用したことは一切触れることはありません。また、ご依頼者には犯罪に利用しない旨を約束頂いております。仮に報告書が離婚請求訴訟の証拠として提出される場合、例えば「ホテルの出入り映像など」GPS調査で得た証拠であることが立証できない以上、却下されることはないと考えています。探偵の調査では、不必要に検索せず必要最小限に留めたり自動検索型でも限定的な位置検索ができる為、プライバシーへの配慮は可能です。

携帯電話には「携帯電話不正使用防止法」があり、転売、譲渡され詐欺に使用されるのを防止するもので契約時に身分証の提示が義務付けされています。レンタル業者はレンタル主と貸し出しGPS端末を識別できる記録を保持している様ですが、音声通話が出来ないデータSIMカードは規制の対象外になっています。LINE電話など通話ができるアプリが浸透していけば同法が適用される可能性がでてきます。その場合、身分証提示が必須となり借りた人物(使用者)が確実に特定されます。GPS端末が見つかり警察の捜査対象になっている時は、やばいです。探偵が行うGPS調査は、その過程において全く法律に抵触しないとは言いきれずグレーであることは間違いないです。見つからないように調査することがGPS調査の基本と考えています。

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