盗聴器・盗撮器の現状について

盗聴器・盗撮器発見調査の現状

(1)盗聴されるケースは多いのか?

盗聴される理由は?個人宅の場合、会話から旅行などのスケジュールや行動予定を探り不在を確認、ストーカーからの行動監視やパートナーの浮気実行日の確認など多様に考えられます。企業内では、社員の不正行為の監視、パワハラ・セクハラの確認など限定的です。盗聴する側から見て本当に価値が高いのは企業間での企業機密情報の収集ではないかと思います。個人の場合では、得られる情報価値と仕掛ける際のリスク(不正行為に対する罰則 注1)を比べると割が合わないと思います。しかしながら、調査依頼は圧倒的に個人様が多いのです。私見ですが、人には被害者意識が少なからずありますのでそれが思い過ごしとなって調査依頼に結びつくことが多いものと考えています。

注1)盗聴はそれ自体に罰則はありませんが、盗聴内容を第三者に漏洩したり盗聴器を仕掛けるために許可無く住居に入ると罰せられます。(電波法違反、住居不法侵入罪)

(2)盗聴器の置き場所

個人宅で仕掛けられる場所は、コンセント内または三叉ソケットが多いようです。電池ではなく電灯線が利用できるため半永久的に動作するためです。室内灯やエアコンの上、テレビ周辺やたんすの裏側などは電波式で電池駆動タイプが多いです。ぬいぐるみや置時計などの偽装タイプは電池式です。(電池式は、電池寿命により交換が必要)。

企業など事務所内では、エアコン、額縁の裏、ホワイトボード、掛け時計、机の裏側、椅子の裏、ゴミ箱など至ところにあります。偽装タイプも多くボールペン、延長コード、三叉コンセント、携帯充電器、キーホルダなどがあります。SDカードなどに記録するタイプが多いように思いますが、電波式で外から傍受して録音するタイプもあります。電波式の場合、ビル内や地下では電波の届く距離が短くなりますので建物外からの受信は難しくなります。事務所に設置する場合、窓側が多いようです。

誰が仕掛けるのか?最も考えられるのが、その場所に出入りして怪しまれない人と思われます。例えば、身内、恋人や社員などです。第三者では、ストーカーや空き巣が考えられますが仕掛けるリスクは高くなりますね。賃貸アパートの前の住人が三叉コンセントとして残していくケースもあるようです。(テレビ放映されているのはこのケースが多いですね)。

室外では、電話線や保安器がありますが、大掛かりになるので最近ではほとんど無いらしいです。自動車の場合は、ダッシュボード内、ルームランプ内、シートの下部や置物の中などがあります。ほとんどが記録タイプのようです。仕掛けるのは家族やパートナーが考えられます。

(3)盗聴器発見調査の方法

一般市販品の盗聴器には電波式と有線式の2種類があり、盗聴器の発見は夫々で方法を変える必要があります。以下は、現在使用されている盗聴器の種類です。

 ・電波式  

   1)アナログ受信機で検出可能(音声が聞こえる)
   2)デジタル盗聴(携帯電話、スマホアプリ、高感度マイク接続)
   3)リモート盗聴(スクランブル方式含む)

 ・有線式

   1)コンクリートマイク(壁、ALC付ICレコーダーと接続)
   2)ボイスレコーダー(ICレコーダー、VOX機能)
   3)レーザー盗聴(ガンマイク、窓ガラスの振動検出)

電波式の1)は、受信周波数が3GHz以上の超広帯域受信機で受信し復調音声を確認することで仕掛けられている場所が特定できます。2)の携帯電話(自動着信応答でマイク感度をあげたもの)はアナログ受信機では音声検出はできません。周波数は800MHz、1.8GHz、2.1GHzとわかっている為、超広帯域受信機で受信し周波数をスペクトラムアナライザーで解析して調査します。また、デジタル簡易無線機やデジタル方式アマチュア小形無線機などはデジタル音声復号器で調査します。3)のリモートスクランブル盗聴は現在、発見が最も困難な盗聴器となっています。周波数が同タイプの送受信機を使用する方法しかなく、仕掛けられた盗聴器の周波数が異なれば発見できません。

電波式以外の盗聴器は、昔は目視で調査していました。現在は熱画像カメラで電子回路が発する熱を検知して表示させて調査します。NLJD(電子回路動作検出装置)は、半導体回路を使用する装置から発生するふく射電波を検出することを利用し携帯電話やリモートスクランブル盗聴器の発見が期待できます。リモート盗聴は、電源オンオフを切り替えますので電源オン状態の時しか検出されません。レーザー盗聴は、建物の外からレーザー反射波を検出して盗聴するため発見できません。カーテンや音楽を流すことで対策可能と思われます。

(4)最後は目視しかない?

有線式の場合、電波を出さないので目視で発見するしかないのですが、熱画像カメラやNLJDも合わせて使用すると発見効率があがります。コンクリートマイクは音声を無線で送信するタイプもありますが、最終的には仕掛けられた場所を特定するのは目視しかありません。

(5)盗聴器発見の調査機材

探偵が実際に調査で使用するのは超広帯域受信機とハンディタイプ受信機がほとんどです。スペクトラムアナライザーやNLJD、熱画像カメラは、数十万から数百万と高額であり対応できるのは盗聴器発見専門業者しか対応してないのが現状です。盗聴する側からすれば、スマホやデジタル盗聴は高額なため市販されているアナログ方式の会話発信機(低額で手に入る)を選択しているように思われます。実際に仕掛けられている盗聴器のタイプは、アナログ電波式が7割を占めると言われています。テンベスト(電磁波を検出)のような特殊盗聴器やリモートスクランブル(ステルス盗聴)などは滅多にないようです。このため、発見調査は広帯域受信機で7割程度は発見可能と考えています。探偵業者で対応できない特殊盗聴器は、専門業者に任せるのがベターと考えています。

アナログ電波はどこまで届くか?資格なしで出せる出力は1mワット以下で小さい為、見通しで100m以内です。木造造りであれば家屋周辺に近づくだけで電波がキャッチできますが、鉄筋コンクリート内では事務所が窓側に無ければ受信はやや難しくなるようです。一方、デジタル盗聴(特定小電力無線やデジタル簡易無線)の場合、出力定格が増加している為、到達距離は長くなります。簡易無線で1K~2Kmです。但し、音声信号はデジタル符号化されていますのでデジタル音声復号器がなければ盗聴できませんが・・・・。

(6)盗撮器とは?

超小型カメラが普及し、今やカメラとマイクが一体の小型タイプが主流となっています。現在は、WiFi電波を使って撮影画像の向きを確認でき、近距離であれば画像そのものをタブレットやスマートフォンなどに送信できるものがあります。10m程度は受信可能です。市販の盗撮器は、インターネット販売で簡単に手に入ります。3万円前後です。探偵業者も使用目的こそ違いますが、調査過程や証拠収集で利用します。

盗撮器は、そのほとんどが偽装型です。腕時計、置時計、ペン型、キーホールダー、ライター型、携帯電話型、壁掛け衣類フック型、メガネ型など多種多様のものに偽装されています。小型軽量ですのでSDカードに録画するタイプがほとんどです。偽装型以外では、大手のブランドでナイトショット付ビデオカメラが使用される場合もあります。また、不可視赤外線付の暗視カメラや遠隔で方向を調整可能なタイプ、フルハイビジョンで高精細の超小型ビデオカメラが出てきています。(高精細カメラは、探偵も使用しています)。インターネット環境があれば、どこからでもタブレットやスマートフォンで確認できる監視カメラも設置場所によっては盗撮に使用可能と思われます。

仕掛けられる場所は?個人宅では、浴室、トイレ、寝室やリビングなどが多いようです。会社では、事務所、会議室、給湯室など。ラブホテルでは盗撮器は多いようですが、ホテル側が公表していません。録音・録画したデータは、後で回収する必要が出てきます。また、2GHz帯の電波式監視カメラは、昔から利用されています。

発見には、電波式のものは盗聴周波数(2GHz帯)までをスキャンして同調させ映像を確認する装置を利用します。電波式以外は目視にてカメラ探知機などを使用して行います。

(7)仕掛けるのはストーキングかスパイか?

誰が仕掛けるのか?個人が対象となる場合、その個人のプライバシーや個人情報に興味ある人物と考えられます。例えば、誰と付き合っているか、どんな生活をしているか、職業は何か?これって、探偵が素行調査でも調べる内容ですね。探偵業以外では、ストーカーではないでしょうか?一方、親族内で相続に関する情報を探る方がおられるかもしれません。つまり、パートナーであれ元恋人であれストーカー的な行為で盗聴しているケースがほとんどで、特殊な盗聴器は使わないと考えています。

企業では、会社社長や上司が社員の不正行為を監視するケース、上司の悪口など自分のことをどのように見ているか知りたいケース、パワーハラスメントを受けている社員、企業機密を知りたいライバル企業など考えられます。ここで、発見が難しい特殊盗聴器を仕掛けるのは、機密を収集したいライバル企業関係者ではないかと思われます。ラブホテル内では、アダルトビデオ関係者かよく利用されている客が考えられます。企業やラブホでは、むしろ盗撮器が多いように思われます。

(8)警察への被害届

盗聴器や盗撮器が見つかった場合、処理をどうするか?ですが、住所地を管轄する警察署に届け出ておけば後々、何かあった際に警察の対応が早くなる可能性があります。実際は、仕掛けられていたとしても会話を傍受されているだけで金品や器物に被害がでていない以上、警察が捜査することはありません。犯人が会話内容をネット上や第三者に漏洩すれば名誉毀損か電波法違反の疑いがでてきます。録音装置や電池の交換で再侵入すれば住居不法侵入の疑いがでてきます。この場合、監視カメラなどで証拠をとっておくと被害届が出しやすくなります。

(9)スマホのアプリは大丈夫なのか?

スマホアプリでスマートフォンが盗聴器になる場合があります。自動着信応答アプリをターゲットのスマホにインストールすることで着信すると送信側に音声がまる聞こえとなります。(Bluetoothと組み合わせれば100m離れていても聞こえる)。このアプリは、Android5以上ではOSが機能を不動作としますが、古いバージョンのスマホを使用している方は要注意です。

寝言録音アプリ「Sleep Talk Recorder」は、寝言やいびきを録音しておいて本人に聞かせるためのアプリですが、盗聴器的な動作をさせることが可能なようです。録音データは、クラウドストレージに送信可能。身近な人でないと無理ですが・・・。

「Cerberus」(ケルベロス)は最も危険な遠隔操作アプリです。スマホにインストールされると現在の居場所や電話の通話録音、写真撮影、SMS送受信履歴や通話記録の閲覧などが出来るようになります。アイコンも非表示に出来ますのでステルスとなります。操作は、PCからスマホにログインして実行できます。対策するには、設定からアプリ一覧を開き動作中のアプリを調べてアンインストールにします。また、他人のスマートフォンに許可無く操作すると、刑法162条2(不正指令電磁的記録作成など)で罰せられます。

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