証拠映像収集の現状と課題

証拠映像収集の現状と課題

(1)探偵社が収集する証拠

・浮気調査で必要な「不貞行為の立証」のための証拠写真・映像
・ストーカ行為の状況証拠
・いじめ、嫌がらせ等の状況証拠(音声、映像)
・素行調査で必要な「対象者の行動、行き先、接触者の顔写真など」の状況証拠
・聞き込み調査で得られる「音声や映像による聞き込み状況」
・行方調査で収集する情報(聞き込み、交友関係など)の記録、本人顔写真
・証拠収集調査(裁判証拠、違反事項の証拠映像など依頼によるもの)

探偵業務のほぼ8割が上記に示す映像・写真の収録となります。これらの証拠写真(動画からのスナップ写真も含め)とその時の詳しい状況を記載し時系列にまとめたものを調査報告書としてご依頼者に納入しています。

(2)タイムスタンプ(日付表示)

写真や映像は、防犯カメラの映像でよく知られるように目撃証言と違い極めて高い証拠能力があります。しかも日付、時刻とセットで記録される為アリバイの有無などの判断に使われたりもします。タイムスタンプ(日付表示)機能は、ディジタルビデオカメラに必ず搭載されています。記録された映像や写真を再生すると日付、時刻が表示されます。調査開始前の各種ビデオカメラの時刻合わせは、整合性を保つ上で極めて重要となります。

ビデオカメラの外部メモリに記録されたディジタル画像ファイル(ファイル形式は、カメラの仕様により種々あります。注1)を編集のためパソコンにファイルコピーしますが、再生時に日時が表示されない場合があります。その場合、カメラから日付あり再生画像を直接HDDレコーダー等に記録してからDVDにコピーし編集しています。再生画面で表示されてなくてもファイル自体に日付データが格納されていますので、編集ソフトによって日付を表示させることが可能となります。証拠収集用の小型ビデオカメラやディジタルカメラは、そういう問題はありません。

注1)AVCHD(HD)、MPEG2、AVI、MOV、H.264/MPEG-4、WMV,MP-4、OGMなど

(3)カメラ画像の編集

探偵社が使用するカメラは、HDタイプの高解像度ディジタルビデオカメラや秘匿性の高い超小型の高解像度カメラ、暗闇でも撮影可能な暗視機能など種々使用します。超小型のカメラは現在、フルハイビジョン(フルHDタイプ)カメラが主流となっています。レンズが口角なものでは、4K以上の超解像度製品が出てきています。遠方から対象者を撮影した場合、4Kカメラであれば局所拡大しても鮮明に顔を特定できるほどの解像度をもっています。また、解像度が高い8Kスマートフォンも出てきています。

これらのカメラの動画ファイルをDVDに焼き付け証拠として提出しますが、映像調整時の余計な部分を削除したり、証拠として連続性が要求される部分や必要な写真を動画から切り出す必要があります。このような画像編集には、無料若しくは有料の画像編集ソフトを利用します。高度な編集では、暗い画面を明るくさせたりプライバシー保護のため写りこんでしまった無関係な人物にモザイク処理をすることができます。また、様々なファイル形式の変換が可能で異なる画像ファイルでも同時に編集可能なソフトもあります。(WinX Video Converter、Free Make Converter、Any Video Converterなど)

無料のWindowsムービーメーカーなら、簡単な編集や切り出しが出来ます。有料の動画クリエーターソフトにはAdobe Premiere ProやEDIUS Pro9などがありますが、プロ仕様です。(価格は3万円~5万円程度)。スマートフォンカメラで撮影した画像であれば、パソコンにファイル移行して編集し、DVDにコピーしています。

(4)民事裁判での証拠写真について

民事裁判における不貞行為による離婚請求訴訟(民法770条1項1条)、不貞行為の相手方に対する慰謝料請求訴訟(民法709条、710条)を起こす場合、「不貞行為を立証する」ための証拠映像や写真を弁護士さんから(若しくはご依頼者経由で)要求されます。不貞行為を立証する為に、性交渉があったことについて合理的で疑いの余地のない程度の心証を裁判官に持たせる為の状況証拠が必要となります。具体的には、性交渉そのものの写真、動画、録音や性交渉に関する内容のメール、手紙のほかラブホテル、旅館、相手方住居への出入りについての写真、動画などを証拠として要求されます。

ラブホテルへの出入りの場合、

・ラブホテルに入った時と出た時の男女両名の顔や服装が識別できる写真、動画。
・ラブホテルの出入り口であることがわかる建物の全景もしくは看板等の写真、動画。(注)住所の特定も必要となります。

旅館、相手方の住居の場合、

・性交渉があったと推定できる入ってから出てくるまでの時間の記録。
・女性の場合、服装や髪型、アクセサリーの変化の有無が確認できる写真、動画。(注)性交渉のため服を脱いだことの推定ができます。

相手方の住居の場合、

・手を繫いだり、腕を組む等の行為についての写真、動画。(注)不貞行為を追認させる有力な証拠となります。

(5)証拠映像収集の課題

・目隠し撮影など撮影技術の日々訓練

不明瞭な映像、写真では証拠能力が薄れます。探偵は誰にも悟られずに鮮明な映像を確実に撮影する技術が要求されます。時間をかけ目標を定めて撮影するなどもってのほかです。撮影技術(手法)は、長年培った経験と目標を達成する強い意志が相まって醸成されるもので属人的ではありますが、素人探偵には到底真似できません。

優秀な探偵は、複数台のカメラを事前に調べた場所もしくは映像が撮れる場所に設置し、不調のカメラが発生した時に他のカメラでカバーするよう工夫しています。また、目標(対象者)に悟られない様さりげなく撮影することを要求され液晶画面を見ず目隠し状態で目標が撮影できる様、日々訓練を続けています。また、対象者を監視しにくい場所ではWi-Fiネットワークでスマートフォンと接続して遠隔で監視する秘匿性の高いカメラの積極的な導入を心掛けています。

カメラの仕様、性能を熟知しバッテリ容量に対する記録時間や、発熱による保護回路の作動条件、レンズの結露など天候や動作環境によってカメラが不調になるケースを把握し対策を準備しておく必要があります。予備バッテリの準備・交換が重要となります。

・高額な調査機材への投資

局所拡大や暗所に強い4K、8Kカメラなど調査機材への投資が不可欠になっています。暗闇でも撮影、録画できる暗視カメラや熱を感知して撮影できるカメラは、高額ですが、対象者の居場所特定や盗聴器の発見に威力を発揮する優れものです。高度な映像編集のための有料ソフトの導入と共に正確で美しい報告書を作成するためにも調査機材への投資が重要課題となっています。

・スパイウエアによる情報漏洩へのセキュリティ対策

探偵社は、パソコンを使用して画像編集や報告書の作成をしています。そのパソコンがインターネットに接続されている環境では、収集した証拠映像や報告書が漏洩しない様外部からの攻撃に対して個人向けのセキュリティツールで対策しているのが現状です。今後ますます多様化するネット社会において、様々な脆弱性を攻撃してくるワームやウイルスなどにより社内ネットワークは新たな脅威に晒されることになります。この脅威に対抗するため、アンチウイルス、アンチスパム、Webフィルタリングなど複数の異なるセキュリティ機能をひとつのハードウエアに総合させた次世代ファイヤーウォールシステム(UTM 注)を検討する必要がでてきています。法人向けでありながら、コストを低く抑えたシステムで既に導入している探偵社もあります。

(注)Unified Threat Management

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